Torブラウザとは?その仕組みや、安全に利用する方法を解説
インターネットでのプライバシー保護がますます重要視される中、Torブラウザはその解決策として注目されています。Torブラウザは、ユーザーのオンライン活動を匿名化し、第三者からの追跡を防ぐために開発された無料のオープンソースソフトウェアです。このブラウザを使用することで、国の検閲規制を回避したり、オンラインでのプライバシーを強化したりすることができます。この記事では、Torブラウザとは何か、その仕組みや用途、そしてTorブラウザの危険性や使い方について詳しく解説します。ネット上でのプライバシーを守りたい方、セキュリティを強化したい方は必見です。
目次
目次
Torとは?
Tor(The Onion Router)とは、インターネット上で匿名通信を可能にするための無料かつオープンソースのソフトウェアです。ユーザーのインターネット活動が監視されたり、位置が追跡されたりするのを防ぐことで、ユーザーのプライバシーと自由を保護することを目的としています。
Torは、ユーザーのインターネットトラフィックを世界中のボランティアによって運営されるリレーネットワーク(ノード)を通過させることで匿名性を確保します。データは複数回暗号化され、各リレーを通過するたびに一層ずつ暗号が解かれる仕組みで、これを「オニオンルーティング」と呼びます。この多層的な暗号化により、最終的な受信者は元の送信者のIPアドレスを知ることができず、ユーザーの匿名性が確保されます。
Torネットワークを利用するには、特別に設計されたオニオンブラウザ(Tor Browser)が必要で、オニオンブラウザを利用することで、ユーザーは簡単にTorネットワークに接続し、匿名で安全にウェブを閲覧できるようになります。
Torブラウザとは?
Torブラウザとは、インターネット上で匿名で安全にブラウジングするために特別に設計されたウェブブラウザです。このブラウザは、Torネットワークを利用して、ユーザーのプライバシーを保護し、インターネット活動の追跡や監視を防ぎます。Torブラウザは、Mozilla Firefoxをベースにしており、プライバシー保護のために特別な設定と拡張機能が組み込まれています。
Torネットワークを利用して、ユーザーのインターネット接続を複数のリレーを通じて暗号化し、追跡や監視から守ります。これにより、ユーザーのIPアドレスを隠すことができ、匿名でウェブサイトにアクセスすることが可能となります。
Torのプロジェクトは、アメリカ海軍調査研究所によって1990年代半ばに開発が始まり、2002年には、Torはオープンソースソフトウェアとして公開され、一般のインターネットユーザーも利用できるようになりました。2006年に、Torプロジェクトは非営利団体として正式に設立され、プライバシーとインターネットの自由を推進するための開発と普及活動を行っています。
Torブラウザの仕組み
Torは他のウェブブラウザとは異なる仕組みになっていて、ユーザーのデータを処理する際に、特定のサーバーの使用を省略するマルチプロキシネットワークを提供するのが特徴です。Torは、自分のIPアドレスを隠すために、他のユーザーと接続を共有します。もちろん、このブラウザに多くの人が接続しているので、「オリジナル」のユーザーデータを特定することは困難です。
また、Torブラウザは、ブラウザを終了するたびに、クッキー、キャッシュ、履歴などの閲覧データを自動的に削除してくれます。
TorはすべてのOSに対応しており、C、Rust、Pythonでのコーディングが可能です。ウェブ上で数回検索すれば、無料でダウンロードできるリンクもあるので、初心者でも簡単に利用できます。
Torブラウザの用途
Torブラウザは、国の検閲規制を回避したい人や、IPアドレスを隠したい人、またはブラウジング習慣を盗聴されたくない人に最適です。以下の人たちがどのようにTorブラウザを活用しているのか、見てみましょう。
Torブラウザの匿名性は、ユーザーが求める機能であることは言うまでもありません。この機能は、国の検閲規制を回避したい人や、IPアドレスを隠したい人、またはブラウジング習慣を盗聴されたくない人に最適です。
- 政府および軍事機関:政府や軍事機関は、Torブラウザを使用して安全に情報を収集し、通信を行うことができます。これにより、スパイ活動やサイバー攻撃を防ぎつつ、機密情報を保護することが可能です。また、国家安全保障に関わる敏感な操作や情報交換を匿名で行うためにも利用されることがあります。
- 法執行機関:法執行機関は、Torブラウザを利用してオンライン犯罪の調査や捜査活動を行います。たとえば、ダークウェブ上の違法取引や犯罪組織の動向を監視するために使用されます。また、捜査官自身の身元を隠しながら操作を行うことで、ターゲットに気付かれるリスクを減らすことができます。
- 活動家やジャーナリスト:活動家やジャーナリストは、Torブラウザを使用して政府や大企業による監視から身を守りながら情報を発信します。特に、抑圧的な政権下での活動や告発はリスクが高いため、匿名性を確保することで報復を避けつつ、安全に活動を行うことができます。
- 一般ユーザー:一般のユーザーや個人は、オンラインでのプライバシーを守るためにTorブラウザを使用します。Torブラウザを利用することで、インターネットプロバイダや広告主による追跡を避け、個人情報の漏えいを防ぎます。
皆が皆、Torを正当な目的で使うわけではありません。Torは、インターネットユーザーを匿名にするだけでなく、Torを介してしかアクセスできないダークウェブにアクセスするためにも使用されています。ダークウェブへのアクセス自体は違法ではありませんが、ダークウェブはしばしば悪質で違法な目的で使われるので、使用は避けた方が賢明でしょう。
Torブラウザの使い方
以下に、Torブラウザの基本的な使い方について説明します。
- Tor browserをインストール:まず、Torブラウザをダウンロードしてインストールします。インストールが完了して完了ボタンをクリックするとTorが起動し、Torネットワークへ接続するための設定画面が表示されます。ほとんどの場合、接続ボタンをクリックするだけでいいのですが、プロキシ経由でインターネットに接続している場合は、Torブラウザの設定ボタンをクリックして設定を入力する必要があります。
- 接続を確立する:Torがリレーを経由してネットワークへの接続を確立する間、若干の遅延が発生します。最初の接続に数分かかることもありますが、この接続が完了するとTorブラウザが起動して使用できるようになります。TorはFirefoxと同じコードをベースにしているので、MozillaのWebブラウザを使ったことがあれば、かなり使いやすいでしょう。たとえFirefoxを使ったことがなくても、Edge、Chrome、Safariとあまり変わらないので、すぐに使いこなすことができます。
- セキュリティレベルを選択:Torブラウザを使い始める前に、Torブラウザの使用はプライバシー/セキュリティとウェブの使いやすさのバランスを取る行為であるということを覚えておいてください。デフォルトでは、セキュリティは「標準」に設定されていますが、これでも他のウェブブラウザよりははるかに安全です。セキュリティを強化したい場合は、アドレスバーの左にあるタマネギのアイコンをクリックし、「セキュリティ設定」を選択します。アクセスしたサイトで機能が停止する可能性があることを示す警告が表示されるので、それを考慮した上で、「セキュリティレベル」のスライダーを使ってお好みの保護レベルを選択してください。
- 安全な検索エンジンを選択:Torを最大限に活用するためには、Webブラウジング習慣を変える必要があります。その第一は、安全な検索エンジンを使用することです。GoogleやBingといった検索エンジンではなく、DuckDuckGoやAhmiaなどの安全な検索エンジンと組み合わせて使用することができます。
- HTTPSを使う:オンラインで安全かつ匿名でいるための重要な要素は、「HTTP」ではなく「HTTPS」を採用しているWebページにアクセスすることです。Torブラウザには「HTTPS Everywhere」という拡張機能がデフォルトでインストールされているので、安全なバージョンのウェブサイトがあれば、そちらにリダイレクトしようとしますが、さらなる安全策としてアドレスバーに注意を払うことをおすすめします。安全なサイトに接続している場合は、アドレスバーのに緑色の南京錠のアイコンが表示されます。これが表示されていない場合は、「i」のアイコンをクリックして詳細を確認してください。
- Onion over VPNの使用:プライバシーレベルをさらに引き上げたい場合は、Onion over VPNを使用し、Torブラウザを起動する前にVPNに接続しましょう。VPNはあなたがTorブラウザで何をしているかを見ることはできませんし、TorノードがあなたのIPアドレスを見ることができないという利点もあります。また、あなたがTorを使用していることをネットワークオペレータに知られることもありません。これは、あなたがいる場所でTorネットワークがたまたまブロックされている場合に役立ちます。
VPNでオンラインプライバシーをさらに強化。
NordVPNを購入Torブラウザのデメリット
Torブラウザにはいくつかのデメリットも存在します。以下に、Torブラウザの主なデメリットについて説明します。
- 評判の問題:Torブラウザは、オンラインプライバシーを重視する人々にとって貴重なツールである一方で、犯罪者によっても利用されています。このため、Torの評判は必ずしも良くありません。この悪評により、一部のサービスやウェブサイトはTorブラウザからのアクセスをブロックすることがあります。これは、正当な目的でTorを使用しているユーザーにとっては大きな障害となり得ます。
- 接続速度の低下:Torブラウザを使用する際のもう一つの大きなデメリットは、接続速度の低下です。Torネットワークは、ユーザーのトラフィックを複数のノード(中継サーバー)を通過させ、その度にトラフィックを暗号化します。このプロセスにより、ユーザーのオンライン活動が匿名化される一方で、通常のインターネット接続よりも大幅に遅くなることがあります。特に、動画のストリーミングや大きなファイルのダウンロードなど、帯域幅を多く消費する活動においては、遅延が顕著に感じられ、不便に思うでしょう。
Torブラウザの危険性
Torブラウザは、オンラインでの匿名性とプライバシー保護を提供するための強力なツールですが、その特性上、いくつかの危険性も伴います。以下に、Torブラウザを使用する際の主な危険性について詳しく説明します。
- 違法な活動への利用:Torブラウザは、その匿名性を活かして、ダークウェブなどの違法な商品やサービスが取引される場所へのアクセス手段として利用されることがあります。これにより、ユーザーは意図せずに違法なコンテンツや活動に関与してしまうリスクがあります。ダークウェブでは、薬物、武器、偽造品、人身売買などの違法取引が行われていることが知られています。こうした違法なマーケットにアクセスすることは法的な問題を引き起こす可能性があるため、ユーザーは十分な注意が必要です。
- 通信の傍受リスク:Torネットワークを介した通信は複数のノードを通過しますが、その中には悪意のあるノードも存在する可能性があります。これにより、一部の通信が傍受されるリスクがあります。特に、出口ノードにおいては、暗号化されていないトラフィックが傍受される可能性が高くなります。したがって、Torブラウザは絶対的な匿名性や安全性を提供するものではなく、特に機密性の高い情報を扱う際には追加のセキュリティ対策が必要です。
- アクセスの制限:Torブラウザを使用することで、一部のウェブサイトからアクセスを拒否されることがあります。これは、Torの悪評や違法活動の利用から、ウェブサイト運営者がTorブラウザからのアクセスをブロックすることがあるためです。合法的な目的でTorブラウザを使用しているユーザーにとって、これは大きな障害となり得ます。。
TorとVPNの違いは?
パソコン初心者やIT技術に長けていない人であれば、「TorはVPNなのか」という疑問が生じると思います。Torは、VPNとは異なる運用方法を採用しています。VPNが中央集権的な組織によって維持されているサーバーのネットワークを使って、トラフィックを暗号化してルーティングするのに対し、Torはボランティアによって運営されている分散ネットワークです。
TorはVPNに比べると、透明性が低く、速度も遅く、複雑ですが、それでも強力なツールであることに変わりはありません。
VPNはTorよりも透明性の高い方法であなたのトラフィックを保護する仕組みです。さらに、VPNを使用中もインターネット接続が顕著に遅くなることはなく、強力な暗号化アルゴリズムを備えていたり互換性に優れていたりなど、Torにはないより多くの機能を備えています。
まとめ
Torブラウザは、他の競合するソリューションに比べていくつかのメリットがあります。ウェブにて無料で入手できるこのプログラムはますます人気が高まっていますが、ウェブ閲覧時、特にダークネットを閲覧する際には常に警戒を怠らないようにしましょう。
TorとVPNを併用することで、よりプライベートで安全なブラウジングが可能になります。もし、VPNに接続した際に速度が遅いと感じる場合はこちらの記事を参照ください。