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デジタルトランスフォーメーション(DX)の現状と課題: インフォグラフィックスで世界と日本を比較

日本では、2021年9月にデジタル庁が創設され、社会全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)が推進しました。この記事では、具体的に日本のDXはどのような現状で、何が課題となっているのか、世界の国々と比較しつつ、デジタル化における日本の強みと改善点について、分かりやすくインフォグラフィックスで解説していきます。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の現状と課題: インフォグラフィックスで世界と日本を比較

デジタル競争力ランキング上位30カ国 日本は?

スイス・ローザンヌに拠点を置くビジネススクール、IMD(International Institute for Management Development:国際経営開発研究所)が公表する「世界競争力年鑑 (World Competitiveness Yearbook) 」。

この年鑑には各国のデジタル競争力を調査した「デジタル競争力ランキング」があり、「知識」「技術」「将来への備え」の3つの要素から構成されています。なお、日本からは三菱総合研究所が政府公表のデータを中心に統計データ収集支援をしており、信頼性の高い調査結果です。まずは気になる世界のデジタル競争力ランキングをインフォグラフィックスで見てみましょう。

世界のデジタル競争力ランキング

デジタル競争力ランキングは63ヶ国・地域が調査対象となっています。

トップ3はアメリカ、シンガポール、デンマーク。アメリカは2018年以降3年連続首位で、3要素の中でも「知識」で高評価を獲得しています。

アジア諸国では台湾が11位、韓国が8位にランクイン。台湾・韓国とも国を上げてのデジタル化が推進されており、行政での個人情報などのプライバシーの取扱いについての国民の理解が多少なりとも受け入れられている側面があるかもしれません。対して日本は、27位の結果となりました。

IMDが指摘する日本の強みと課題

他の先進国と比べ、日本の順位がここまで低いのはなぜでしょうか?IMDによると、日本が持つ強みと今後の課題は以下のようになっています。

指標日本の順位日本の強み日本の課題
知識 (素質, 研修・教育, 科学的集中度)22– 学生対教師比率 (高等教育)– 人材の国際経験
– デジタル・科学スキル
技術(規制の枠組み, 政府, 技術的枠組み)26– モバイルブロードバンド加入者
– ワイヤレスブロードバンド
将来への備え(適応性, 企業の機敏性, IT統合)26– 世界のロボットの占有率
– ソフトウェアプライバシー
– 機会とデジタルセキュリティ対策
– 企業の機敏性
– ビッグデータの使用と分析

日本においては2016年から2020年に至るまでの順位はほぼ横ばいで、大きな変化はありません。ある中国メディアは、日本がデジタル化が遅れを取っている原因として、「社会的構造にある」と指摘しています。慣例に従う行政機関は根付いてしまっている慣習を根底から変化させることに抵抗を感じる人も多く、大きな改革をもたらすに至らないのだと分析しています。

日本政府としても、主要デジタル先進国と比較して日本のIT投資はハードウェア・ソフトウェアともに見劣りしていることを認め、課題として挙げています。

IMDによれば、「知識」では 学生対教師比率 (高等教育)、「技術」ではモバイルブロードバンド普及率・ ワイヤレスブロードバンド、「将来の備え」では世界のロボットの占有率・ ソフトウェアプライバシーで、日本は首位または2位を獲得しています。

デジタル庁により、クラウド上で異なる組織のシステム統合を果たすことで、非効率的な縦割り行政を修正することが可能になります。他の先進国に遅れをとってはいるものの、日本のデジタル化には今後の万進が期待されます。

一人当たりのGDPが高い国の中での日本のデジタル競争力

次に、国家のデジタル競争力が一人当たりのGDP(国内総生産)にどの程度影響しているのかをインフォグラフィックスで考察していきたいと思います。

一人当たりのGDPとデジタル競争力

縦軸は2020年のデジタル競争力スコア、横軸は2020年の一人当たりのGDP(購買力平価換算)の数値を示しています。

このグラフを見ると、完全ではありませんが双方の数値に相関があるのが分かります。例えば、デジタル競争力スコアで2位のシンガポールは一人当たりのGDPではルクセンブルクに次ぐ2位を獲得しています。

一方、一人当たりのGDPでは30位となっている日本は、デジタル競争力スコアで25位となっています。

日本の一人当たりGDPが近いの国のデジタル競争力スコアはどうでしょうか?

韓国(27位)・イギリス(28位)と比較してみると、デジタル競争力スコアは韓国が8位、イギリスは13位と、日本より遥かに上位となっています。

一方、日本と一人当たりGDPが近い国の中でも、スペイン(29位)、チェコ(31位)、イタリア(34位)などの国は日本よりデジタル競争力スコアが低くなっています。スペインでは「将来への備え」の項目での順位の降下が著しくなっており、国内での失業率がおよそ15%と高く、デジタル化への投資が追いついていないとの指摘があります。イタリアでは特に、デジタルスキルを持った人材の育成、インターネットの接続スピード、ITテクノロジーの経済への統合などの面で他のヨーロッパ諸国に比べて遅れを取っていると言われており、日本同様、高齢化社会による高年齢層のデジタルサービスの取り込みも課題となっています。

ランキング2020年の一人当たりGDPデジタル競争力スコア
1アメリカ63,051100
2シンガポール95,60398.052
3デンマーク57,78196.013
4スウェーデン52,47795.146
5香港58,16594.451
6スイス68,34093.693
7オランダ57,10192.567
8韓国44,29292.252
9ノルウェー64,85692.17
10フィンランド49,33491.13
11台湾54,02090.772
12カナダ47,56990.482
13イギリス44,28886.314
14アラブ首長国連邦58,46685.97
15オーストラリア50,84585.472
16オーストリア55,40683.127
17ドイツ53,57181.062
18イスラエル39,12680.723
19アイルランド89,38379.232
20エストニア37,03378.03
21ニュージーランド41,07277.69
22アイスランド54,48277.091
23フランス45,45476.983
24ベルギー50,11476.977
25日本41,63775.099
26ルクセンブルグ112,87573.269
27カタール91,89771.619
28スロベニア38,50669.475
29スペイン38,14368.985
30サウジアラビア46,27367.91
31チェコ40,29367.459
32ポルトガル33,13166.511
33キプロス39,07961.664
34イタリア40,06660.911

デジタル政府ランキング トップ20カ国

続いては、2020年7月に発表された世界デジタル政府ランキングをインフォグラフィックスで分析していきます。

世界電子政府ランキング

この調査は2年毎にUNDESA(国連経済社会局)から発表され、国連加盟国193ヶ国を対象とした各国政府のデジタル化レベルをランキングにしたものです。

「オンラインサービス」「通信基盤」「人材指標」の3つの指標を元に、0から1の間で、EGDI (E-Government Development Index)を算出しています。

日本の順位日本のスコア世界第一位の国のスコア地域で第一位の国のスコア世界平均
オンラインサービス指標11位0.90591.0000 (韓国)1.0000(韓国)0.5620
通信基盤指標6位0.92231.0000(リヒテンシュタイン)0.9684(韓国)0.5464
人材指標14位0.86841.0000(オーストラリア)0.8997(韓国)0.6880

気になる日本は14位と、前回2018年から「オンラインサービス指標」が下がったことにより10位から4つ落とす結果となってしまいました。その理由としては、行政サービスのWeb上で必要な情報にすぐ辿り着けないことや、行政手続きの煩雑さが指摘されています。

この調査で意外なのが、世界1位のデンマークに次いで2位を獲得した韓国です。韓国は前回3位から1つ順位を上げた形で、デジタル政府先進国と言えるでしょう。

韓国がデジタル政府先進国となったのは、2006年に制定された「行政情報共同利用法」がきっかけです。この法律により「行政情報共同利用システム」が生まれ、オンラインで必要な情報を揃えることができるようになりました。

しかしながら便利になった反面、個人情報漏洩などの問題も頻繫に起こっており、情報セキュリティ対策が課題となっています。

デジタルトランスフォーメーションが社会に与える影響

新型コロナウイルスのパンデミックにより、世界中でデジタル化がさらにトレンドとなっているものの、デジタルトランスフォーメーションを進めることによって具体的にどのようなシナリオが待っているのでしょうか?

  • デジタル化により、物流および電力業界で2016年から2025年の間に世界中で最大600万人の雇用が創出される。その他の産業でも、オートメーション(自動化)は多くの人間に取って代わるようになるでしょう。デジタルトランスフォーメーションの結果として勝者と敗者の二極化が生まるため、企業が従業員のスキルアップを促し、機械化時代での次世代の人材育成が急務となります。
  • 自動車、運送、電力通信を含む10の業界のデジタルイニシアチブによって、2016年から2025年までに世界で推定260億トンのCO2排出を回避できる可能性がある。この数字は、同期間にヨーロッパ全体で排出されたCO2とほぼ同量です。これが実現された時、新しい循環型ビジネスモデルの受け入れ、顧客の順応、およびデジタルテクノロジー自体の環境への影響という課題を克服できたことを意味します。
  • 行政のデジタル化によってビジネス環境が大幅に改善すると、日本の一人当たり実質GDP成長率は1.1%高まる。1.1%分の増加は一人当たり平均 4.6万円の所得増に相当する。
  • リアルタイムの所得情報やマイナンバーカードに紐づけた迅速な生活支援・保護の給付が可能に。イギリスには税務当局が国民の毎月の所得を把握するリアルタイム所得情報システムがあったことから、コロナ禍で減収した人とそうでない人をリアルタイムに把握することが可能だったと言われています。日本では、政府に個人の所得が筒抜けになることに対する心理的抵抗が強い側面がありますが、マイナンバーカード普及を2022年度末までにほぼ全国民に行き渡らせることを目標とし、給付金申請の簡素化や行政手続きのオンライン化実現の加速化を図るとしています。
  • 日本では、デジタル化のためのテクノロジーによって、およそ70%が「日々の仕事が大幅に改善される」と考えている。デジタル化が環境にもたらす変化への意識調査では、全ての年齢層のおよそ70%が仕事面での改善が実現すると考えています。
  • 国内のEC普及率が4割から8割に。内閣府の報告書によると、現状の日本のEC普及率は4割に留まっているものの、日本の所得や通信環境を考慮すると約1年程度で欧米諸国のEC普及率8割までに追いつくと見込まれています。
  • サブスクリプションの市場規模は、2019年の6,835億円から、2024年までには約1.8倍の1兆2,117億円まで拡大すると予測されている。 内閣府によれば、サブスクリプション市場の進展は、消費者の利便性や満足度の向上に加えて、「様々な追加需要や地理的制約を超えたビジネスチャンスの創出につながっており、現行のGDP統計では捉えることの出来ない未計測の付加価値を生み出している」と言われています。また、他の先進国と比較するとまだ伸びしろがある点も示唆されています。

出典:

World Economic Forum 「Understanding the impact of digitalization on society」

総務省「自治体のDX推進について」

東京財団政策研究所 英国のPAYE(Pay As You Earn)に学ぶ所得情報のデジタル化

デジタル化がもたらすのは希望か、脅威か  PwCコンサルティング合同会社

内閣府 令和2年度 年次経済財政報告

第4章 デジタル化による消費の変化とIT投資の課題 第1節

まとめ:日本のデジタルトランスフォーメーション(DX)の現状と展望

日本では企業や組織のトップがデジタルトランスフォーメーションの必要性を理解しているものの、保守運営などのDX人材不足やシステム維持のコスト面、セキュリティ面のリスク等が障壁となっています。NordVPNが独自に行った調査「ナショナル・プライバシー・テスト」では、日本でのサイバーセキュリティに対する知識は100点満点中44.4点と、半分以下の正解率でした。デジタルトランスフォーメーション促進と同時に、学校や企業でのITリテラシーを高める教育が今後必須と言えるでしょう。