フェイクニュースについて知っておくべきすべてのこと
フェイクニュースやデマ情報、陰謀論は、広くインターネット上で拡散され、現実世界に悪影響を及ぼしています。近年、SNS(ソーシャルメディア)を利用してフェイクニュースを拡散する国の数は、150%増加しています。この記事では、これらのキャンペーンはどのような目的で行われ、どのように実行されているのか、またフェイクニュースの見分け方について解説します。
目次
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フェイクニュースの意味とは?
フェイクニュースの意味や定義とは、広告収入や、著名人・政治運動・企業などの信用失墜を目的で、ネット上で広く共有されるように作成された、事実と異なる、虚偽またはでたらめな内容のニュース記事のことです。
世界中でフェイクニュースやネット上の嘘情報を利用する政府の数が増えています。2018年当時、70カ国以上が何らかの形でSNSの操作を行っていたことが判明しており、その数は現在もほぼ確実に増えています。
フェイクニュースは通常、政府機関、政党、政治家によって作成・拡散されます。時には、民間業者や市民団体が代わりに作成することもあります。これらのフェイクニュースは、「親政府または親政党のプロパガンダ」「反対政党を攻撃するプロパガンダ」そして「社会を分裂させるメッセージ」の3つの主要な分野に焦点を当てている傾向があります。
フェイクニュースの拡散経路
フェイクニュースやデマ情報がSNS上で拡散される理由は、人々がSNSを主要な情報源として信頼するようになったからです。SNSは、あなたに関する多くの情報を収集し、それらを利用します。これにより、ターゲットを絞り、あなたの好みに合わせてメッセージを作成し、より説得力のある情報を表示させることができるのです。
たとえば、政治家は、有権者が両論併記である場合、見解が曖昧な人をターゲットにして、資金を投入する可能性が高くなります。ある問題についてまだ強い意見を持っていない人を改心させる方が、はるかに簡単で費用対効果も高いのです。
ここからは、フェイクニュースの拡散経路や拡散する方法についてご覧ください。
- 実際のユーザーを模倣して作成されたボットアカウントや、偽アカウントを使用する。ボットとは、パソコンやスマホを乗っ取り、外部から遠隔操作してマルウェアに感染させることができるコンピュータプログラムのことです。中には、偽アカウントと自動メッセージ、またはハッキングされた盗用アカウントを混合して使用するケースもあります。
- 市民団体、若者グループ、SNSのインフルエンサー、活動に賛同するボランティアなど、一般市民と連携する。これらの団体の背後に隠れることで、偽の情報を見分けることが驚くほど困難になります。
- 国家が管理するメディアプラットフォームを利用する。バイラルニュース、特に動画形式の情報は、国家に支援されたメディアによって宣伝されることがあります。これは抑圧的な政権下でよく見られる戦略ですが、海外でも非常に効果的です。ロシア政府の代弁者と広く見なされている英語放送局RTは、長年にわたって親ロシア派のプロパガンダを流してきましたが、ロシア・ウクライナ戦争が始まって以来、ヨーロッパの規制当局がようやくその範囲を限定し始めたところです。
- 偽情報を広めるためにさまざまな種類のメディアを選択する。メディアの読者や視聴者はプロパガンダとは思わないかもしれません。ミーム、動画、偽のウェブサイト、SNSの投稿、コメント、インフルエンサーが作成したコンテンツは、すべてフェイクニュースやプロパガンダとして利用することができます。また、広く利用されている対話型AIのChatGPTは、現在さまざまなメディアプラットフォームのコンテンツ作成によく使われています。しかし、このチャットボットには不正確な情報を提供したり、特定の人物の口調やスタイルを説得力を持って模倣したりする傾向があるため、ChatGPTの安全性は疑問視されています。
- 正しいプラットフォームを選択する。Facebookは依然としてフェイクニュースやデマ情報の拡散に利用される最大のプラットフォームのひとつで、Twitter、Instagram、WhatsApp、YouTubeがそれに続いています。サイバーセキュリティの専門家は、人工知能、バーチャルリアリティ、モノのインターネットも、やがてプロパガンダの作成と支援に、より広く使われるようになると警告しています。
- ディープフェイク技術を利用する。ディープフェイクとは、人工知能(AI)によって生成された、人の顔や声を忠実に再現するメディアのことで、近年ますます人々を惑わすのに効果的なツールとなっています。2022年のウクライナ戦争勃発後、ウクライナのゼレンスキー大統領が自国軍に降伏を指示するディープフェイク動画がネット上で拡散されました。もちろん、この動画は完全なる捏造です。
フェイクニュースの見分け方
フェイクニュースによる問題に踊らされずに、嘘だらけ、デマだらけのネットニュースを見極めるにはどうすればいいのでしょうか?ここからは、SNS上のフェイクニュースや嘘のニュースを見分ける方法や目を向けるべきポイントを紹介します。
- 投稿は何か感情を呼び起こすものか。もし、怒りや憤りなどのネガティブな感情を呼び起こすようであれば、そのニュースのストーリーを疑って、事実を確認したほうがいいかもしれません。もしかしたら、そのような感情的な反応を起こさせるために作られた記事かもしれません。
- 投稿に文法的な間違いはないか。信頼できるニュースソースの多くは、公開する前に編集と校正を徹底的に行うため、投稿に誤字脱字がある場合、別の目的のために作成されたコンテンツである可能性があります。
- 画像は文脈から切り離されたり、編集されたりしていないか。ファクトチェックのために、オリジナルのニュースを検索してみましょう。
- ステレオタイプを強調したり、文化や宗教の分断が深まったりする内容になっていないか。
- ソース元はどこか。悪質な人たちは、ソーシャルハッキングやフィッシング詐欺と同じようなテクニックを使っている可能性があるので、投稿のリンクを確認しましょう。「合法的に見えるか」「ソースが信頼できるものか」に注目しましょう。
- 他の場所で報告されているか。出来事やニュースは、あなたが信頼しているメディア、新聞、テレビ局で取り上げられていますか?そうでない場合は、事実でない可能性があります。
フェイクニュースの事例
フェイクニュースの目標は、国内外のSNSのユーザーを惑わせることです。誤解を招くようなフェイクニュースやデマ情報は、次のような目的で使用されています。
アメリカの大統領選挙の事例
2020年の米大統領選では、ネットでの不確かな情報やデマだらけの情報が、飛び交いました。有権者をマイクロターゲットにして、大統領選挙や国民投票など、公的な世論調査に影響を与えるという作戦です。これを成功させるには、ユーザーの属性、趣味、収入などのデータを採取し、どのように偏向させるか戦略を練る必要があります。
新型コロナウイルスの事例
日本にて、新型コロナウイルスの感染拡大に伴ってSNSなどで流れた嘘の情報もフェイクニュースに分類することができます。紅茶や緑茶で新型コロナウイルスを予防できるといった医学的根拠のない情報や、新型コロナウイルスは一般的な風邪と同じといった主張、さらに携帯電話の5G技術が新型コロナウイルスを活性化させるといったデマは恐怖を煽るフェイクニュースです。
日本のコタツ記事の事例
コタツ記事とは、ジャーナリストやライターが、取材対象者に直接インタビューすることなく、一次情報を収集・再構成した記事のことを指す俗語です。ブログや掲示板、SNSの情報を集約してマスメディアに紹介する、ニュースサイトやまとめサイトにて、フェイクニュースがよく見られます。
低コストでPVを稼ぐ手段として、ネット上の反応を記事にする手法としてコタツ記事が誕生しましたが、取材なしで書けるコタツ記事は、データも証拠もなく、ネット上のデマ情報をまとめたものは少なくないです。
ロヒンギャ問題の事例
フェイクニュースがいかに暴力を煽り、ヘイトスピーチを増幅させ、宗教・政治・社会集団間の分極化を促進するかを示す明確な例として、2017年以降のミャンマーにおけるイスラム教徒少数民族ロヒンギャに対する暴力や大量虐殺が挙げられます。これは、主にFacebookで拡散されたプロパガンダによって扇動されたものです。
ロシア・ウクライナ戦争の事例
ウクライナのゼレンスキー大統領のディープフェイク動画についてはすでに触れましたが、他にもロシア当局が自分たちの目的を宣伝するためにデマや誤解を招く動画を使用する例はたくさんあります。
たとえば、ロシアのSNSアカウントは、ウクライナ政府が武力攻撃を主導したとする動画や、ウクライナ軍が攻撃で民間人に脚を切断する怪我を負わせたとする動画を投稿しています。しかし、いずれの動画も検証の結果、架空のものであることが判明しています。
SNS、特にTwitterでは、世界各地で起こった過去の紛争の画像や映像が、現在の戦争のものとして拡散されています。しかも、これらの投稿は、フェイクニュースを真実と信じている一般ユーザーのアカウントによって広くシェアされ、デマ情報を拡散していることに気づかないケースも少なくありません。
かつて誤報は主に国営メディアやその他の公式チャンネルを通じて広められていましたが、今では個々のネットユーザーがその真偽を確かめることなく、自発的にフェイクニュースをシェアしているのです。
フェイクニュースの対策
SNSプラットフォームは、フェイクニュースや偽情報を徐々に取り締まっていますが、SNS企業が行っていることは少なすぎる、遅すぎるという批判もあります。
ここからは、今すぐに自分でできるフェイクニュースの対策方法について見ていきましょう。
デマのニュースを阻止する
言うは易く行うは難しですが、プロパガンダに対抗することはできます。たとえば、SNSでは必要な情報のみを公開し、余分な情報を公開し過ぎないようにしましょう。また、確実にフェイクニュースを阻止したい場合は、SNSの利用をやめるのもいいでしょう。
少なくとも、SNSの危険性を常に意識し、SNSを信頼できるニュースソースとは考えないようにしましょう。
SNS企業の多くが拠点を置くアメリカでは、1996年に制定された連邦法により、SNSプラットフォームはニュース発行者ではないため、掲載されたコンテンツに責任を負うことはないと決められました。しかし、フェイクニュースやヘイトスピーチは増加傾向にあり、SNS企業は独自の方法でフィルタリングを行っています。
しかし、フィルタリングで確実にフェイクニュースを排除できるほど、簡単ではありません。フィルタリングのアルゴリズムはフェイクニュースを100%選び出せるほど高度ではないし、手動での削除は人為的なミスが生じる余地があります。
フィルタリングの有無にかかわらず、嘘の情報を作り出す人たちは、常に新しいツールやテクニックを使って私たちを欺こうとしています。ですから、インターネット上の情報をすべて鵜呑みにせず、嘘と真実を区別するスキルを養うことが重要なのです。
フェイクニュースを通報する
フェイクニュース、フェイクアカウント、その他の偽情報に出くわした場合は、プラットフォーム上で通報しましょう。ほとんどのSNSには、事実無根のでたらめな情報を通報する機能が備わっています。
通報するまでに至らないけれど、信憑性に欠ける情報に関しては、友人に共有しないことを心がけましょう。もし共有した方法が嘘である場合、あなたを信じてしまう人がいるかもしれません。少しでも疑問がある、あるいは自分で判断できない情報はシェアしないことをおすすめします。
まとめ
ディープフェイク技術、人工知能(AI)、モノのインターネット、ロボットなど、新しい技術の出現によって、私たちの生活はより便利になりました。
しかし、技術に100%信頼し、セキュリティ対策や、フェイクニュースの見分け方を含むサイバーセキュリティに関する知識を一切身につけないことは、非常に危険です。NordVPNのブログから最新のサイバーセキュリティニュースを入手して、日々増え続けるサイバー攻撃を未然に防ぎましょう。
また、NordVPNの脅威対策Pro機能は、マルウェアやトラッカーなど、日常的なオンラインのサイバー脅威から守るために設計されているので、普段使っているデバイスに導入すれば、非常に心強い味方となるでしょう。