Windows PCの初期化とは？目的や準備、注意事項について解説

Windows PCを工場出荷時にリセットする必要性

一般的にパソコンを長く使用していると、パソコン内に様々なアプリやソフトをインストールしたり、作成したデータを保存しているといった多くの積み重ねがあります。一方、Windows10もしくは11のパソコンを工場出荷時の状態にリセットする作業のことを初期化といいます。初期化とは、Windowsパソコンを購入した初期の状態に戻す作業のことで、パソコンの初期化を行うことで、Windowsが購入時の状態に戻ります。Windowsの場合は初期化と呼びますが、その他の場合には「リカバリー」や「再セットアップ」と呼ばれる場合もあります。この初期化を実行するシチュエーションはいくつかあります。

また、「リフレッシュ」という初期化と同じような言葉がありますが、これは「Windowsを再インストールする方法を選択します」という意味であり、この場合はデータは残るものの、購入後にインストールしたソフトは削除されます。

パソコンを転売する場合

Windowsパソコンを初期化する理由の一つにパソコンの転売があります。パソコンを新しく買い替えた後に使用しなくなった既存のパソコンを中古品として転売したり、友人に譲る場合に問題となるのがデータ漏洩です。そこでパソコン内部のデータが外部に漏れないように全てのデータ消去するために初期化をします。

パソコンの調子がよくない場合

特定のPCで画面がフリーズしたり、動作が思うようにできないなど調子があまりよくない際に一度このPCを初期状態に戻す場合があります。このPCを初期状態に戻すとどうなるかというと、これまで繰り返し発生していた不具合やクラッシュを修正したり、動作の遅いシステムを改善し、PCからマルウェアや不要なソフトウェアを削除するなど、大幅に改善される可能性が高まります。

パソコンを初期化するメリットとデメリット

パソコンを初期化することはメリットしかないようにも感じますが、実はデメリットも存在します。こちらでは、パソコンを初期化すること得られるメリットとデメリットについて解説します。

初期化のメリット

Windows PCを初期化するメリットとしては、まずパソコン内に保存されていたデータが閲覧できなくなるので、個人情報や機密情報の漏洩を防ぐことができます。さらに初期化することでパソコン内の空き容量が増える分、新しいデータの保存が可能になり、かつ動作が安定して速度が速くなることもあります。もちろん、 ウイルスに感染したコンピュータ の場合、初期化することでウイルスを削除することができ、安全性を保つことができます。

初期化のデメリット

まず、初期化する前にパソコン内の各データのバックアップをとる手間もかかります。バックアップ先が物理的なハードドライブだったり、オンライン上のクラウドサービスを使用したい場合はそれぞれ購入費用や月々の管理費用がかかります。

また、初期化する方法によっては、Windowsのパソコン内の全てのデータが削除されてしまい、保存していたデータを見ることができなくなるというデメリットがあります。加えて、パソコンを初期化する前と同じ状態で使用したい場合は、パソコンに入っていたアプリやソフトなどを再インストールしたり、再設定する手間がかかります。

ただし、コンピュータの基本的な制御機能であるBIOS（Basic Input / Output System）の設定の初期化に関しては、パソコンの設定環境が工場出荷時の状態に戻るだけなので、データが消去されるなどのデメリットはありません。

初期化すると何が失われるのか？

こちらでは、Windowsパソコンを初期化することで失われるものについて解説します。

まず、Windowsパソコンを工場出荷時のリセットとハードディスクの中身を消去するのは全く別物だという認識を持つべきです。Windowsパソコンを工場出荷時のリセットをした場合は、パソコン内のアプリやソフトはもちろんのこと、環境設定、個人ファイル、保存していた各オンラインサービスのアカウントやパスワードなどのログイン情報も消去されてしまうため、それらを再設定する必要があるなど、初期化前と同じようにパソコンを利用できるまでにいくつか手間がかかります。

また、セキュリティ面に関しては、パソコンを初期化する前に設定していた マルウェアを削除するため のセキュリティパッチが消えるものもあるため、特に初期化した直後はセキュリティ対策が施されていないということもあってウイルスなどへの感染リスクが高まってしまいます。

このように初期化という工場出荷時の状態にリセットすることは全てのデータや設定を削除してしまうことなので、もし初期化を検討している場合は、重要なデータを失わないためにも他の思いつく選択肢を全て試してから実行することをおすすめします。

Windowsパソコンを初期化する際の注意事項

上記でも紹介した通り、Windowsパソコンを初期化する際に気をつけるべき注意点はいくつかあります。以下では、について解説します。

時間を確保する

お使いのPCの状態にもよりますが、初期化するのに時間がかかりすぎたりする場合があるので、あらかじめある程度の時間がかかることを想定しておきましょう。加えて初期化後、パソコンの環境構築やアプリやソフトのインストールなど再度設定する時間もかかるため、少なくとも1日ほどは時間を確保しておくことが理想的といえます。

電源アダプターに接続している状態で始める

Windowsノートパソコンなどを初期化する場合は、予想以上に時間がかかり、途中で充電がなくなって切れてしまう場合があるため、なるべく電源アダプターに接続した状態で初期化作業を開始しましょう。

事前に初期化によって消えるデータや設定を把握しておく

初期化する方法によって消えるデータや設定は異なります。初期化する際に「個人用ファイルを保持する」を選択すると、アプリは残りませんがWindows内の設定や個人用データ保持は残ります。一方、「すべて削除」を選択するとそれらの情報は全て消えてしまいます。削除した後で後悔しないためにも、どのデータを消去されるのかを事前に把握しておくことが重要といえます。

バックアップをとっておく

初期化する際に誤って大切なデータを削除してしまったなんてことはよくあります。そんな不測の事態に備えて、念のためバックアップをとっておきましょう。

Microsoftアカウントの情報を控えておく

初期化した後のPCでMicrosoftアカウントを使用してサインインすることで、自分用にカスタマイズしたあらゆる設定やフォーマットを再び利用することができます。初期化後に同じ設定でパソコンを使用したい方はMicrosoftアカウントにサインインする際に必要な情報を控えておきましょう。

Windows10パソコンを初期化する５つの方法

基本的にWindows10パソコンを初期化する方法は全部で５種類あります。こちらでは、それぞれの方法について解説します。

１.デスクトップ画面から初期化する

1. 1.画面左下のWindows印から「設定」＞「更新とセキュリティ」＞「回復」＞「このPCを初期状態に戻す」の下にある「開始する」の順にクリック
2. 2.「個人用ファイルを保持する」、または「すべて削除する」のどちらかをクリック
3. 3.「Windowsを再インストールする方法」＞「設定の変更」＞「確認」ボタンをクリック
4. 4.設定の変更が反映された画面が表示されるので、特に問題がなければ、「次へ」＞「リセット」の順にクリックすると、自動で再起動されて初期化されます。

２.ツールを使って初期化する

Windows10パソコンに搭載されている「Media Creation Tool」を使用してハードディスクを初期化することが可能です。

1. 1.Windows10のダウンロードのページを開き、「ツールを今すぐダウンロード」をタップし、ダウンロード開始
2. 2.ダウンロードしたファイルから「Media Creation Tool」を起動させ、「別のPCのインストールメディアを作成する」を選択し、Windowsをインストール
3. 3.Windowsを再インストールした後は、Microsoftアカウントの本人確認を実行してOfficeを設定し、必要なアプリやソフトをインストールするなど自分が使いやすい状態にしましょう

３.リカバリーツールを使って初期化する

パソコンメーカーによってはリカバリーツールを提供している場合があり、これを使用して初期化することができます。使用方法は各メーカーの公式サイトなどで確認することができます。

４.回復ドライブを使用して初期化する

Windows8以降のOSには、何らかのトラブルに備えてパソコンを初期状態に戻すための機能である「回復ドライブ」を搭載しており、以下の手順で初期化できます。

1. 1.コントロールパネルの「回復」＞「回復ドライブの作成」をクリック
2. 2.「システムファイルを回復ドライブにバックアップします」にチェックが入っていることを確認後、「次へ」をクリックし、ログイン画面より再起動
3. 3.「オプションの選択」＞「デバイスの使用」と進んで画面の指示に従います

５.サインイン画面から初期化する

1. 1.パソコンのサインイン画面で「電源」をクリック
2. 2.shiftキーを押しながら「再起動」をクリックし、再起動
3. 3.「オプションの選択」＞「トラブルシューティング」＞「このPCを初期状態に戻す」をクリック
4. 4.「個人用ファイルを保持する」または「すべて削除する」のどちらかをクリック
5. 5.アカウントのパスワードを入力して「続行」＞「初期状態に戻す」をクリックしたら完了

Windows11を初期化する３つの方法

基本的にWindows11パソコンを初期化する方法は全部で３種類あります。こちらでは、それぞれの方法について解説します。

１.デスクトップ画面から初期化

1. 1.画面左下のWindows印から「設定」＞「更新とセキュリティ」＞「回復」＞「このPCを初期状態に戻す」の下にある「開始する」の順にクリック
2. 2.「個人用ファイルを保持する」、または「すべて削除する」のどちらかをクリック
3. 3.「Windows を再インストールする方法」＞「設定の変更」＞「確認」ボタンをクリック
4. 4.設定の変更が反映された画面が表示されるので、特に問題がなければ、「次へ」＞「リセット」の順にクリックすると、自動で再起動されて初期化されます。

２.インストールメディアから初期化

Windows10同様、Windows11のパソコンにも搭載されている「Media Creation Tool」を使用してハードディスクを初期化することが可能です。

1. 1.Windows10のダウンロードのページを開き、「ツールを今すぐダウンロード」をタップし、ダウンロード開始
2. 2.ダウンロードしたファイルから「Media Creation Tool」を起動させ、「別のPCのインストールメディアを作成する」を選択し、Windowsをインストール
3. 3.Windowsを再インストールした後は、Microsoftアカウントの本人確認を実行してOfficeを設定し、必要なアプリやソフトをインストールするなど自分が使いやすい状態にしましょう

３.再起動してから初期化する

Windows11パソコンにログインできない場合は、サインイン画面からログインせずに再起動して初期化することも可能です。

1. 1.ログイン画面の右下にある電源をクリックし、表示されたメニューの再起動を「Shift」キーを押しながらクリックするとPCが再起動され、「トラブルシューティング」＞「このPCを初期状態に戻す」の順にクリック
2. 2.「Windowsを再インストールする方法」＞「設定の変更」＞「確認」の順にクリック
3. 3.変更が反映された設定画面が表示されるので、特に問題がなければ、「次へ」＞「リセット」の順にクリックすると、自動で再起動されて初期化されます。

PCの初期化で起こりうる問題と解決方法

Windows11や10のパソコンを初期化する際、ごくまれに初期化できない場合があります。以下ではWindowsパソコンを初期化する際に起こりうる問題とその解決方法について解説します。

ドライブの空き容量不足

パソコンの初期化を実行するための空き容量が必要になります。もし、初期化を失敗してしまうとパソコン本体に大きな負担がかかってしまうので、事前に不要なファイルやアプリの削除、一時的に外付けのHDDなどへデータを移動することで空き容量を確保してから実行することをおすすめします。

ウイルスソフトの影響

Windows10や11のパソコンにウイルスソフトを導入している状態で初期化を実行すると、初期化できなかったり、途中で画面がフリーズしてしまうことがありますが、その場合は電源ボタンを数秒間長押して強制的に再起動するなどし、強制初期化しましょう。また、パソコンがウイルスに感染している場合、初期化に失敗したり、ウイルスによってはパソコンを初期化しても消えない可能性もあります。初期化後に再起動を繰り返し行ったとしても、パソコンが起動しなくなったりするリスクもあるので注意が必要です。Microsoft純正のソフト「Windows Defender」以外のウイルス対策ソフトを利用している方は初期化する前にアンインストールしておきましょう。

Windowsパソコンの初期化をプロに任せる

最後にWindowsパソコンの初期化をプロに任せる際のポイントについて解説します。

お使いのWindowsパソコンを自分で初期化することが難しいという方は、パソコンなどの専門業者に任せるのも一つの手といえます。ただ、注意しておきたのは、初期化などの業務を請け負う業者の中には、顧客のデータを復旧させて盗んで悪用するという悪質な業者も少なからず存在します。機密データや個人情報が盗まれた場合は、金銭的な被害はおろか、被害者の存在自体を否定するような精神的な被害を被ってしまう危険があります。また、適切な方法で初期化を行うことができなければ、元々起きていたパソコンの不具合がさらに悪化してしまう危険性もあります。もし、パソコン専門業者に初期化を頼む場合は、事前に評判などを調べ、信頼性の高いプロの業者を選ぶことをおすすめします。