ゲーミフィケーションとは?
ゲーミフィケーションとは、「ゲーム(game)」と「〜化(-fication)」を組み合わせた言葉で、ビジネスや教育などの課題を解決するために、ゲームの要素や仕組みを応用する手法を指します。
たとえば、「営業目標を達成したら社内で賞を与える」「練習問題をクリアしたらシールを配る」といった仕組みもゲーミフィケーションに該当します。目標達成のためにゲームのような課題と報酬が設定されるのが特徴で、報酬には金銭的なものだけでなく、称賛や特典といった非金銭的なものも含まれます。従業員や学習者のモチベーションを高めたり、顧客のエンゲージメントを強化したりすることが主な目的です。
「ゲーミフィケーション」という言葉は2004年に初めて使われ、2011年にIT分野の調査会社ガートナー社が報告書で取り上げたことで、一気に広まりました。
ゲーミフィケーションが広まった背景
「ゲーミフィケーション」という言葉が初めて使われたのは2004年です。その後、2011年にIT分野の調査を行うガートナー社が報告書で取り上げたことをきっかけに、世の中に浸透していきました。近年、さらにゲーミフィケーションが広まった背景には、以下のような要因があります。
- スマートフォンやWeb技術の普及
- eラーニングでの成功事例
スマートフォンやWeb技術の普及により、インターネットで手軽に疑似体験ができるようになりました。たとえば、オンラインゲームで従業員になってみることで、現実世界でも困難な事態に対処できるようになります。双方向のやりとりもリアルタイムで可能になり、遠隔操作で川の掃除をするといったゲーミフィケーションも生まれました。
eラーニングでの成功事例も出てきたことで、オンライン上での学びに抵抗がなくなったことも、ゲーミフィケーションが広まった背景として挙げられます。
ゲーミフィケーションをサイバーセキュリティのトレーニングに活用できる?
サイバーセキュリティに対する従業員の意識を高めるトレーニングにも、ゲーミフィケーションを活用できます。
たとえば、サイバー攻撃に遭った際のシミュレーションゲームで、実際のサイバー攻撃に対する対処法を効率的に身につけられます。
また、段階ごとにトレーニングと報酬を設定し、従業員のモチベーションを維持します。リーダーボード(スコアを表示するボード)の導入で、競争心を刺激するといった方法も効果的です。
サイバーセキュリティへのゲーミフィケーションの活用・研究事例
ここからは、サイバーセキュリティ分野におけるゲーミフィケーションの活用事例を紹介します。具体的な事例を通して、自社の教育やトレーニングに応用できるかどうかを検討してみましょう。
CTF(Capture The Flag)の事例
CTF(Capture The Flag)は、サイバーセキュリティの知識とスキルを競う競技です。個人か団体で参加し、セキュリティ関連の課題を制限時間内にいくつ解決できるか競います。
たとえば、ベルギーに拠点を置くソフトウェア企業Codificは、従業員のチームワークと創造性を高めるために「クリスマスCTFゲーム」というゲーミフィケーションを活用しました。参加者は偽のオンラインショップアプリ内に隠された11個の問題点を見つけ出します。普段の業務では接しない従業員と関わる機会にもなります。
ゲーミフィケーションを大学院で研究している事例
名古屋工業大学の大学院では、情報セキュリティが初心者の大学生でも学べるように、ゲーミフィケーションを用いたゲームの試作品を開発しました。「防御視点」だけでなく、「攻撃視点」も重視されているのが特徴です。攻撃者の手口を考えることで、セキュリティに対する理解促進を目指しています。
知識からの応用力をより高めるために、講義とゲームシステムを組み合わせた授業設計も提案されています。
ゲーミフィケーションをビジネスに活用するための設定
ゲーミフィケーションをビジネスに活用するには、いくつかの重要な設定が必要です。参加者が継続的に取り組めるよう、使いやすさや楽しさを参加者の視点から設計することがポイントです。
目的の決定
ゲーミフィケーションをビジネスに導入する際は、明確な目的の設定が必要です。ゲーミフィケーション実施後の効果を測定するためにも、重要な要素です。
具体的な目的として、「社員のモチベーション向上」「顧客エンゲージメントの強化」などが考えられます。効果が測定しやすいよう数値化した目標と、目的達成までの期間も、併せて考えておくといいでしょう。
課題(クエスト)の設定
課題(クエスト)は目的達成のための具体的なステップとして、参加者が何をすべきかを明確に示します。
クエストは難易度に応じて段階的に設定し、少しずつ達成できるようにすれば参加者のモチベーションを維持しやすくなります。クエストの具体例は、以下のとおりです。
クエストの設計時には参加者のフィードバックを積極的に取り入れ、定期的に改善を行いましょう。
報酬の設定
報酬の設定は参加者のモチベーションを維持し、行動を促進するために欠かせません。報酬の種類を、以下の表にまとめました。
報酬の種類 | 概要 | 具体例 |
---|---|---|
マネタリーリワード | 金銭的価値を持つもの | ギフトカード、クーポン、ポイント |
インナーリワード | 達成感やスキルアップ感を与えるもの | 自己成長やスキルアップの実感・特典 |
ソーシャルリワード | 他者からの承認や社会的評価を得られるもの | 仲間からのフィードバックや称賛・受賞 |
報酬は、クエストやタスクの難易度に応じて段階的に設定されるべきものです。「簡単なタスクには小さな報酬」「難しいタスクには大きな報酬」を提供すれば、参加者が挑戦し続ける動機となります。
現状の可視化
現状を可視化できるようにすれば参加者は自らの位置づけを理解し、ステップアップのための適切なアクションを選択しやすくなります。
具体的には、レベルやスコア、称号、バッジ制度などを活用して、参加者が自分のスキルレベルを把握できるようにしましょう。ほかにも、ランキング形式にすると競争意識が刺激され、参加者がより積極的に活動するようになります。
交流の場の設定
交流の場で参加者同士が情報交換し切磋琢磨すれば、モチベーションを高める効果があります。クエスト達成に向けた戦略やアイデアを共有することで、個々のスキル向上だけでなく、チーム全体のパフォーマンス向上も実現可能です。
たとえば、オンラインフォーラムやチャットグループを活用する方法が考えられます。参加者が自由に意見を交換できる雰囲気づくりを心がけましょう。
ゲーミフィケーションのメリット
ゲーミフィケーションには、以下のようなメリットがあります。これらの利点を十分に活用することで、より効果的な学習環境の構築が可能になります。
目標が設定しやすくなる
ゲーミフィケーションは、具体的な課題が設定されており、参加者は何を達成すべきかが明確になります。目標をクリアしていくごとにスキルアップが実感でき、モチベーションを高めながら継続的な取り組みが可能となります。一定の経験を積んだ従業員に、次に目指すものを示すことで、仕事のやりがいを改めて実感してもらうのにも効果的です。
モチベーションアップにつながる
ゲーミフィケーションはゲームの要素を活用するため、楽しみながら学習に取り組むことができ、参加者のモチベーションを自然に高める効果があります。報酬や競争、達成感といった要素が参加者のやる気を引き出し、目標達成に向けた継続的な行動を促します。
ゲーミフィケーションのデメリット・注意点
ゲーミフィケーションには、以下のようなデメリットや注意点もあります。あらかじめこれらを把握しておくことで、より効果的にゲーミフィケーションを導入・活用することができます。
課題設定が難しい
参加者一人ひとりのスキルや経験に合わせた適切な課題設定は、簡単ではありません。課題が難しすぎるとモチベーションを低下させ、簡単すぎると興味を失わせる可能性があります。
課題設定の難しさに対処するためには、参加者からのフィードバックを積極的に収集し、継続的な改善を行うのが重要です。また、ゲーム的な面白さを維持するために新しい要素を追加するなど、参加者が新鮮な体験を得られるよう工夫しましょう。
効率が下がることもある
ゲーム要素に過度に依存すると本来の目的から逸れてしまい、業務や学習の効率が下がる可能性があります。
たとえば、参加者がゲーム自体に夢中になりすぎると肝心の業務内容が疎かになります。また、報酬や競争に過度に焦点を当てると、参加者は短期的な成果ばかりを追求する可能性もあります。
ゲーミフィケーションの導入目的を明確にし、本来の業務や学習目標とのバランスを意識するのが重要です。
ゲーミフィケーションの企業での導入成功事例
ゲーミフィケーションの企業での導入成功事例を紹介します。実際の導入事例を参考に、自社の業務へどのように組み込んでいくかを検討しましょう。
マイクロソフトの事例
マイクロソフトは消費者サポートサービスにおいて、ゲーミフィケーションを活用し、代理店の生産性向上を実現しました。報酬システムの導入により、従業員の知識向上やスキル開発が促進され、最終的には販売促進や業務成果の向上に寄与したのです。また、従業員のモチベーションとパフォーマンスが向上し、企業全体の業務効率も改善されました。
ウォルマートの事例
ウォルマートは「Spark City」というゲームで、従業員が仮想世界のスーパーで業務を学ぶトレーニングを導入しました。在庫管理指標(OSCA)、顧客満足度指標(CFF)、売上指標の3つのKPI(中間目標)が設定されており、この数値を超えると点数が得られます。キャラクターのヘアスタイルや服装も選ぶことができ、遊び心のあるトレーニングになっています。
ドミノ・ピザの事例
ドミノ・ピザは「Pizza Hero」というアプリで、顧客のエンゲージメント向上と売上アップを実現しました。「Pizza Hero」はピザづくりが学べるゲームアプリです。生地づくりからトッピング、カットまで、画面上のドラッグ&ドロップで手軽にピザづくりが体験できます。当初は純粋にユーザーに楽しんでもらうために作られたもののブランドイメージの向上につながり、売上30%アップを実現しました。
ゲーミフィケーションで組織と個人の成長を促進しよう!
ゲーミフィケーションは、ゲームの要素を取り入れて学習のモチベーションを高め、楽しみながら目標を達成する手法です。近年では、サイバーセキュリティのトレーニングにも応用され、重要なスキルの習得に役立っています。企業や教育機関でも広く導入されており、従業員のスキルアップや顧客の関心を引きつける効果が期待されています。
ただし、参加者が興味を持つ内容の設計や適切な難易度の調整は簡単ではなく、効率が悪化する場合もあります。ゲーミフィケーションの課題を克服するには、「目的を明確化」「参加者のレベルの理解」「継続的な改善」が重要です。
ゲーミフィケーションを自社の業務や教育に取り入れ、従業員のスキルアップや顧客エンゲージメントの向上による生産性向上を目指しましょう。
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