しかし、テクノロジー業界は、圧倒的多数を男性が占めているのが現状で、サイバーセキュリティも例外ではないのです。実際に、サイバーセキュリティ分野の専門家の男女比率をみると、女性が占める割合はわずか4分の1ほどに過ぎません。
男女平等は、テクノロジー業界における課題の一つです。この課題を解消するには、男女の役割に関する固定観念を破り、女性のロールモデルを確立することが大切なのです。
そこで今回は、世界で活躍するサイバーセキュリティに長けた女性を50名厳選してご紹介します。
サイバーセキュリティ業界で活躍する世界の女性50名
サイバーセキュリティ業界における女性の割合は、歴史的にとても低いものでしたが、ここ数年で多少の改善は見られます。
2017年におけるサイバーセキュリティ業界を占める女性の割合は、わずか11%だったところ、2019年には約20%にまで到達しました。男女平等と言えるにはまだ及ばないものの、数字が改善したことは紛れもない事実です。
今後、女性がサイバーセキュリティ業界に従事する機会を増やしていくためには、この分野を先導する女性のロールモデルの存在が欠かせません。女性として憧れる働き方をする人の存在を認識することは、女性の活躍推進に効果的です。
ここからは、サイバーセキュリティ業界で活躍する世界の女性50名を地域別に紹介していきます。
サイバーセキュリティ業界の女性リーダー:アジア編
まずは、サイバーセキュリティに詳しい女性をアジア圏から9名ピックアップして紹介します。
中島明日香
中島明日香氏は、国内外で活躍する日本出身のセキュリティ研究者です。世界的に著名なセキュリティ会議「Black Hat USA」にて査読委員を務めるなど、世界の注目を集めています。現在は、全文検索エンジンを提供するElasticに所属しています。
青山桃子
青山桃子氏は、日立ソリューションズでセキュリティアナリストを務める専門家です。セキュリティ技術支援やレビュー、社内のセキュリティ人材育成など、高度なセキュリティ技術をもつホワイトハッカーとして最前線で活躍しています。
松原実穂子
松原実穂子氏は、NTT チーフ・サイバーセキュリティ・ストラテジストです。早稲田大学卒業後、防衛省勤務。米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院で修士号取得。 彼女の著書には『サイバーセキュリティ 組織を脅威から守る戦略・人材・インテリジェンス』(新潮社、大川出版賞)があります。
ガル・ヘレムスキー
ガル・ヘレムスキー氏は、イスラエル発のサイバーセキュリティ企業であるPlainIDの共同創業者、および最高技術責任者を務める人物です。フリーランスのセキュリティコンサルタントとして活動していた経歴もあります。
エバ・チェン
エバ・チェン氏は、トレンドマイクロ株式会社の共同創業者であり、代表取締役社長兼CEOを務める人物です。リーダーシップスキルとサイバーセキュリティの専門性が高く評価され、サイバーディフェンスマガジンの「2020年 サイバーセキュリティにおける女性トップ100」に選出されるなど、サイバーセキュリティ業界で最も影響力のある女性の一人です。
ケレン・エラザリ
ケレン・エラザリ氏は、サイバーセキュリティ専門家です。彼女の講演は30カ国語に翻訳され、数百万人に視聴されています。TEDトーク「インターネットの免疫系」において、彼女は「ハッカーは、世界中に潜んでいる脅威を発見し、対処法を示してくれる」と語っています。
アーシャ・サクセナ
アーシャ・サクセナ氏は、新興技術に特化した投資会社Future Technologies IncのCEOを20年にもわたって務めた人物です。現在は、Women Leaders in Data and AI(WLDA)という組織の創設者兼CEOとして知られています。
カヴィア・パールマン
カヴィア・パールマン氏は、新興技術におけるプライバシーおよび安全性を提供するXR Safety Initiativeの創設者兼CEOを務めています。XR Safety Domainの先駆者です。
マグダ・チェリー
マグダ・チェリー氏は、ソフトウェア開発会社Responsible Cyberの共同設立者です。また、世界経済フォーラムの専門家ネットワークメンバーやTEDスピーカーなどとして、世界中の聴衆にノウハウの共有も行っています。
サイバーセキュリティ業界の女性リーダー:オセアニア編
続いては、サイバーセキュリティに詳しい女性を、オセアニアから3名紹介します。
シャーマネ・タン
シャーマネ・タン氏は、ソフトウェア開発会社Responsible Cyber Pteの最高戦略責任者を務める人物です。また、サイバーセキュリティインフルエンサーとして、本の出版やさまざまな講演なども手がけています。
アソウ・アミンネズハド
アソウ・アミンネズハド氏は、オーストラリアのシドニーで活躍するサイバーセキュリティ専門家です。マイクロソフト社でクラウドソリューションアーキテクトを務めています。ソリューションアーキテクトとは、クラウドサービスやセキュリティの知識を生かし、顧客に適した問題解決やサービスを提案する仕事のことです。
ヨロンダ・スミス
ヨロンダ・スミス氏は、フード注文・デリバリーサービス関連のソフトウェア会社Grubhubの最高情報セキュリティ責任者を務める人物です。サイバーセキュリティの知識を生かして、レストランが「信頼できる経験を通して忠実な顧客を獲得する」ためのサポートを手がけています。
サイバーセキュリティ業界の女性リーダー:北米編
サイバーセキュリティ業界で活躍する、北米出身の女性リーダーを紹介します。
パリサ・タブリズ
パリサ・タブリズ氏は、Googleで雇われハッカーを務めるサイバーセキュリティ専門家です。「Googleのセキュリティプリンセス」という自称で知られています。我々が安心してGoogle Chromeを使えるのは、彼女が手がけたセキュリティ向上のためのハッキングのおかげだそうです。
ミシェル・ドロレ
ミシェル・ドロレ氏は、脅威評価とセキュリティ監査を専門とするコンサルティング会社TowerwallのCEOを務めるセキュリティ専門家です。また、Forbes Technology Councilなどのオンライン出版にも貢献しています。
ペイジ・S・バリー
ペイジ・S・バリー氏は、DefenseStormでオペレーションリーダーを務めています。20年を越えるキャリアを持ち、Cyber Magazineによって「サイバーセキュリティの女性リーダーTOP10」に選出されるなど、次世代リーダーの育成者としてふさわしい人物です。
サマークレイズファウラー
サマークレイズファウラー氏は、自動車運転技術企業Argo AI の最高情報責任者を務める女性リーダーです。また同時に、カーネギー メロン大学の非常勤教職員としても活躍しています。
ウェンディ・トーマス
ウェンディ・トーマス氏は、Secureworksの社長兼CEOを務める人物です。彼女は、Dellなどのリーダー職での25年の経験を生かし、これまで複数のテクノロジー主導型企業で働いてきました。
アン・ジョンソン
アン・ジョンソン氏は、マイクロソフト社のサイバーセキュリティソリューショングループの副社長です。“Afternoon Cyber Tea”というポッドキャスト番組のホストも務めています。
テリ・ラディシェル
テリ・ラディシェル氏は、サイバーセキュリティのコンサルティング会社2nd Sight LabのCEOを務めるサイバーセキュリティ専門家です。新興企業からFortune 100まで、さまざまな調査や支援を行っています。また、『Cybersecurity for Executives in the Age of Cloud』という本の著書でもあります。
ドーン・ソング
ドーン・ソング氏は、カリフォルニア大学バークレー校で、コンピューターサイエンスの教授を務める女性です。安全でプライベートな機械学習の専門家であり、2010年には、あらゆる分野の優れたかつ献身的な個人を表彰する「マッカーサー財団フェローシップ」を受賞しています。
ジェーン・レクレア
ジェーン・レクレア氏は、Washington Center for Cybersecurity Research & Developmentの代表を務める人物です。また、ニューヨークにあるエクセルシオール大学のNational Cybersecurity Instituteの代表を務めた経歴もあります。
ロリー・クリーナー
ロリー・クリーナー氏は、カーネギーメロン大学のCyLabセキュリティ・プライバシー研究所所長を務める女性です。彼女はこれまでに、オンラインプライバシーに関する150以上の研究論文を著しています。
クリスティン・イズアコール
クリスティン・イズアコール氏は、過去にユナイテッド航空のグローバルセキュリティ戦略・啓発担当シニアマネジャーを務めた人物です。現在は、サイバーセキュリティのオンデマンドプラットフォームCyber Pop-upのCEOを務めています。
シンディー・カレン
シンディー・カレン氏は、サイバーセキュリティ分野の国際的な講演者であり、リーダー的存在である女性です。中でもアプリケーションセキュリティークラウドセキュリティ、リスクマネジメントなどの分野に特化しています。
ヨロンダ・スミス
ヨロンダ・スミス氏は、フード注文・デリバリーサービス関連のソフトウェア会社Grubhubの最高情報セキュリティ責任者を務める人物です。サイバーセキュリティの知識を生かして、レストランが「信頼できる経験を通して忠実な顧客を獲得する」ためのサポートを手がけています。
デイドラ・ダイアモンド
デイドラ・ダイアモンド氏は、テクノロジー業界で25年の経験をもちます。サイバーセキュリティコミュニティへの愛から、サイバーセキュリティの人材派遣・サービス会社CyberSNを創設しました。現在は、CyberSNのCEOを務めています。
ヘザー・アドキンス
ヘザー・アドキンス氏は、Googleの情報セキュリティ、およびプライバシー担当シニアディレクターを務めるサイバーセキュリティ専門家です。Googleのセキュリティチームの一員として、世界的に活躍しています。
ダイアナ・ケリー
ダイアナ・ケリー氏は、サイバーセキュリティ研究者SecurityCurveの共同創業者兼最高技術責任者です。現在は、ネットワークセキュリティ会社Cybrizeにて、セキュリティ最高責任者を務めています。
カレン・エヴァンス
カレン・エヴァンス氏は、サイバーセキュリティ業界において、30年にも及ぶ幹部レベルの経験があるプロフェッショナルです。米国エネルギー省のサイバーセキュリティ、エネルギーセキュリティ、緊急対応担当次官補を務めています。
ウェンディ・ナザー
ウェンディ・ナザー氏は、世界最大のネットワーク製品開発会社Ciscoのアドバイザリー最高情報責任者を務める人物です。テクノロジー業界で40年以上の経験をもつベテランで、金融サービス業界や業界アナリストなどとしてのキャリアも持ち合わせています。
リサ・ジャンヌ・カッツマルチク
リサ・ジャンヌ・カッツマルチク氏は、コンピュータサイエンスとエンジニアリングの教育におけるプログラムおよびプロジェクトの評価責任者を務める人物です。さらには、コンサルティング会社Lisa Kaczmarczyk PhD Consulting, LLCの所有者でもあります。
ヘザー・ローレンス
ヘザー・ローレンス氏は、アメリカのコロラドを中心に活動するセキュリティデータサイエンティストです。数多くのボランティア経験や資格をもつほか、研究論文の出版も手がけています。
ワン・チェンシー
ワン・チェンシー氏は、サイバーセキュリティ専門家です。セキュリティ投資に焦点を当てたベンチャーキャピタルであるRain Capitalの創設者兼ゼネラルパートナーを務めています。
テリ・タカイ
テリ・タカイ氏は、情報技術政策の研究・諮問機関であるCenter for Digital Governmentの元エグゼクティブ・ディレクターです。現在は、上級副社長を務めています。
ミシェール・フルノワ
ミシェール・フルノワ氏は、戦略的アドバイザリー会社WestExec Advisorsの共同設立者兼マネージングパートナーです。米国国防総省の元政策担当次官というキャリアを持ちます。
リンダ・グレイ・マーティン
リンダ・グレイ・マーティン氏は、RSA Conferenceのシニア副取締役を務めています。テクノロジー業界で25年以上の経験をもつベテランです。
ジェン・イースタリー
ジェン・イースタリー氏は、米国国土安全保障省のサイバーセキュリティ責任者を務める女性です。以前は、世界的な金融機関グループMorgan Stanleyにて、Fusion Resilience Centerの最高位を務めていました。
ケイティ・モウソウリス
ケイティ・モウソウリス氏は、組織向けの脆弱性の調整に特化したルタ・セキュリティの創設者兼CEOです。ハッカーを活用してインターネットをより安全なものにすべく、組織のサポートを行っています。
カレン・ウォーステル
カレン・ウォーステル氏は、サイバーセキュリティコンサルタント会社W Risk GroupのCEOを務めています。サイバーセキュリティ業界で30年以上の経験があり、ベストセラーの著書としても知られています。
メアリー・ガードナー
メアリー・ガードナー氏は、鉄道用設備製造業のThe Greenbrier Companiesにて、最高情報責任者を務める人物です。サイバーセキュリティの先導者として15年以上のキャリアをもちます。
ニコール・イーガン
ニコール・イーガン氏は、サイバーセキュリティ企業であるDarktraceの最高戦略責任者を務める人物です。世界的に有名なソフトウェア会社オラクルなどをはじめ、テクノロジー業界で30年以上のキャリアをもっています。
ジュリー・カリバン
ジュリー・カリバン氏は、デバイスの可視化と制御に特化した企業Forescout Technologiesの最高情報責任者兼上級副社長を務める女性プロフェッショナルです。
パトリシア・タイタス
パトリシア・タイタス氏は、世界的な保険会社Markel Corporationの最高情報責任者を務めるサイバーセキュリティ専門家です。過去にはアメリカの金融機関Freddie Macでも最高情報責任者として活躍したキャリアをもちます。
ボニー・バトリン
ボニー・バトリン氏は、カナダおよび世界のセキュリティ分野で活躍するプロフェッショナルのためのプラットフォームであるWomen in Security and Resilience Alliance (WISECRA)の創設者です。さらには、セキュリティ調査会社The Mackenzie Instituteの一員としても活躍しています。
ターニャ・ジャンカ
ターニャ・ジャンカ氏 は、サイバーセキュリティのトレーニングを目的としたWe Hack Purple Communityの創業者兼CEOです。ベストセラー『Alice and Bob Learn Application Security』の著書としても知られています。
シェリル・ビスワス
シェリル・ビスワス氏は、カナダのトロントを中心に活動する、サイバー脅威インテリジェンスを専門とする講演家です。過去には、サイバーセキュリティに関する本も出版しています。
サイバーセキュリティ業界の女性リーダー:ヨーロッパ編
続いては、ヨーロッパ出身のサイバーセキュリティに詳しい女性を5名ピックアップして紹介します。
ジェーン・フランクランド
ジェーン・フランクランド氏は、著者や講演家、インフルエンサーなどとして多面的に活躍するサイバーセキュリティの先導者です。20年以上のキャリアをもち、IN Security Movementの創業者でもあります。
ダーヴィラ・ラノン
ダーヴィラ・ラノン氏は、クラウドベースのビルセキュリティシステムなどを開発するプライバシー会社Verkadaの副社長を務めています。サイバーセキュリティ界において、リーダー役とも言える人物です。
チャニ・シムズ
チャニ・シムズ氏は、Meta Defense Labsのディレクターであり、SHe CISO Execの創業者です。TEDトークにて講演を行うほか、さまざまな雑誌でリーダーとして選出されるなど、イギリスのサイバーセキュリティ界を先導する女性の一人です。
ジェシカ・バーカー
ジェシカ・バーカー氏は、Cygenta社の共同設立者兼共同CEOとして活躍する女性です。彼女はこれまでに、25カ国以上にわたる5万人以上の人にサイバーセキュリティの教育機会を提供してきました。
リサ・ヴェンチュラ
リサ・ヴェンチュラは、23年以上のキャリアをもつセキュリティ専門家です。世界のサイバー脅威と戦うことを目的としたUK Cyber Security Associationの創設者としての一面も持ち合わせています。
まとめ
サイバーセキュリティ分野で活躍する女性を50名ピックアップして紹介しました。「こんな風に働きたい!」「働き方に憧れる」など、自分のロールモデルとなる女性は見つかったでしょうか?
男女比率でみると、サイバーセキュリティ業界で活躍する女性はまだまだ少ないのが事実です。しかし、中には、世界的な大企業でCISO(最高情報セキュリティ責任者)として活動するなど、サイバーセキュリティ業界で大きな功績を残す女性も多く存在します。
本記事で紹介したような女性のロールモデルを確立させることは、テクノロジー業界における女性の活躍を促すことにつながるでしょう。